12章§たおやかな狂える手に

7/23
前へ
/265ページ
次へ
オロの家は、各国に点々とあるのだが……地ノ国の方が医療器具も充実している。 家に着いたのはもう暗い時間。 男の子は、ぐったりとしていて独りでは立てないので、オロが抱えていく事にした。 ――それにしても、この子は何なのだろう? 服装の、肌着――おそらく火ノ国の物だろうなと察知する。 「(まさか、奴隷なのかもね……)」 そう思うと、オロは眉をすぼませた。 火ノ国では人身売買が裏で、行われているらしい。 ――この子供も、そうなら……。 だが、その考えは払拭される。 考えながらオロは、廊下を進み、ちらりと男の子の腕を見ると――輪がなかった。 首輪も。 たいていは、付けられているのだが……。 「(じゃあ……迷子?)」 ……でもない。 服装が火ノ国のならば、何故男の子は琥珀砂漠に居たのか。 天ノ国から火ノ国までは、陰ノ国を挟んで向こう側という位置。 ――意図的に来たとしか、考えられない。 ひとつの、ある部屋に入ると肢体をベットに寝かせる。 血が服についているのでクローゼットから、一着の病院着を持ってきた。 兼業の医者をしていなかったら、幼い男の子が着る服はなかったであろう――…。
/265ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加