12章§たおやかな狂える手に

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とまでは、行かないが……。 ふと視線をベットに向けて、口を開いた。 「……さて、あの子どうしようかな」 孤児院に預けるか、それとも保護するか。 自分にも一人娘――デリスがいる。 そんな事を、オロは考えながら視線を巡らせていると、ひとつの写真立てに目が映えた。 大きな木の前で、目を細めて和やかに笑っており、笑い皴(しわ)がくっきりと眦につき、空と同じ色の青い長髪が優雅に風に揺れているのが、写真から伺える一枚。 齢は、三十代前半の人物。 「………。」 自分が"殺してしまった"ようなモノだ。 込み上げてくるモノを抑えようと、必死に平静を装う。 悔やんでも、悔やんでも――愛した妻は戻らない。 守れるだろうか……救えるのだろうか。 数歩進み、オロは優しく写真に写っている人物の頬に触れた。 「………どうすれば、いいと思う――ビスカ?」 ――貴方を殺してしまった私に、どうか―――……答えを。 『こんな事で、うだうだほざいてたら呪うからな』 「っ……!!」 頭に過ぎる言葉に、オロは顔を強張らせた。 ――答えは、数日でわかることになる。
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