55人が本棚に入れています
本棚に追加
∞∞∞
―午後十時過ぎ:ゼウスタ家・座敷牢―
目を開けると、月明かりが部屋を閉めている障子を照らし、格子が影となり伸びて、床に数本の棒と成り横たわっていた。
「………はぁ」
来てしまった。
まぁ"来なければならなかった"のだが、いずれ―――…。
"問題"は自分を蝕むのだから。
ズキリと腹部から痛みを感じて、壁に寄り掛かるように寝ていたレオ・ゼウスタは顔をしかめた。
瞬時に、森ノ国でルフシュに蹴られた部位だというのを思い出すと、少し視線を上げた。
月明かりが、まばゆい。
姿は見えずとも確信つける光は、時に人を安心にもさせる。
――待遇が良くなったな。
レオは顔を綻ばせた。
幼い頃は、ゼウスタ家にいた記憶の大半、暗い鉄製の個室にいたことが恐怖であるのを思い出す。
時折夢で視る悪夢も、恐怖を増幅させる材料だ。
視線を下に落とすとズボンは泥まみれ、上に着ている黒いワイシャツも汚れており、そのままの状態。
上着は、ミクナに預けている。
身分証明ともなる白刀も同時に預けているので、悪用はないだろう……。
「(こうなったら"覚悟"決めなきゃな……)」
うじうじして、泣くのは幼い頃で十分だ。
ある言葉を思い出す。
『もう……ひとりでは無いのですから』
そうだ。
十年前とは違う。
孤独に苛まれ、死を待っていたあの頃とは―――…。
最初のコメントを投稿しよう!