12章§たおやかな狂える手に

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∞∞∞ ―午後十時過ぎ:ゼウスタ家・座敷牢― 目を開けると、月明かりが部屋を閉めている障子を照らし、格子が影となり伸びて、床に数本の棒と成り横たわっていた。 「………はぁ」 来てしまった。 まぁ"来なければならなかった"のだが、いずれ―――…。 "問題"は自分を蝕むのだから。 ズキリと腹部から痛みを感じて、壁に寄り掛かるように寝ていたレオ・ゼウスタは顔をしかめた。 瞬時に、森ノ国でルフシュに蹴られた部位だというのを思い出すと、少し視線を上げた。 月明かりが、まばゆい。 姿は見えずとも確信つける光は、時に人を安心にもさせる。 ――待遇が良くなったな。 レオは顔を綻ばせた。 幼い頃は、ゼウスタ家にいた記憶の大半、暗い鉄製の個室にいたことが恐怖であるのを思い出す。 時折夢で視る悪夢も、恐怖を増幅させる材料だ。 視線を下に落とすとズボンは泥まみれ、上に着ている黒いワイシャツも汚れており、そのままの状態。 上着は、ミクナに預けている。 身分証明ともなる白刀も同時に預けているので、悪用はないだろう……。 「(こうなったら"覚悟"決めなきゃな……)」 うじうじして、泣くのは幼い頃で十分だ。 ある言葉を思い出す。 『もう……ひとりでは無いのですから』 そうだ。 十年前とは違う。 孤独に苛まれ、死を待っていたあの頃とは―――…。
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