「あなた」

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もう分かった。 他の『誰か』じゃなくて、大勢の中の『誰か』ひとりでもなくて、 『あなた』にいてほしいんだ。 姿が見えないと不安になる。声を聞けないと寂しくなる。目を合わせてもらえないと悲しくなる。 『あなた』がいなくなることが、怖かったんだ。 きっとこれが、カゾクになるという繋がり。 だからわたしは、出会ってから初めて大きな声を出した。 ──おかえり! すると『あなた』は驚いて、隣にいる女の人に「聞いた?」と興奮気味に話しかけた。 「うん、聞いた」 「初めて聞いた! もう一回、なんかしゃべって」 『あなた』が笑う。女の人も笑顔だ。 『あなた』が楽しいとわたしも楽しい。『あなた』の喜ぶ姿が見たくてわたしは頑張る。『あなた』といると、安心できるんだ。 パパ。わたしをカゾクにしてくれて、ありがとう。 この女の人はまだ信用していいのか分からないけど、やっぱりカゾクになるのかな? もう、怖い夢は みたくない。 .
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