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あたたかな陽をあびて道を歩くわたしの後ろを、『あなた』は早足で追いかけてくる。
「そんな急がないで。というか、楽しそうだね」
話しかけられているのは分かっているのだが、わたしは外を散策するのに夢中で、返事もできない。
融けた雪もかわいた、アスファルトの地面。土や砂でざらざらの感触。
路地を抜けてやって来る、風の音。ときおり美味しそうな匂いや、鼻がまがりそうな悪臭まで運んでくる。
家と家の隙間や、まばらに芽を出してきた草や、たくさんの情報が一気にわたしの前に広がって、胸のなかがどきどきした。わくわく、かも。
どこまでもどこまでも行きたくて、わたしの足はなかなか止まらなかった。
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