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やがてあの道にたどりついた。
『あいつ』の家へ至る道。
わたしが今のわたしになる時に通った道。
そこには、複数の大きな自動車が、道を塞ぐようにして停められていた。
わたしなら、小さな身体を隙間から滑り込ませて向こう側へ渡れるかもしれない。でも、『あなた』はどうだろう?
わたしは『あなた』を振り返って見上げた。『あなた』は難しい顔をしている。
「なんだよ、これ。事故か? 通れないじゃないか」
どうする? と問いかけようとして、不意に吹いた風が、わたしの所へ白粉の匂いを運んできた。
ほぼ同時に、あの女の棘がたくさんついているような、胸をさくさく刺すような声も。
とたんに胸がぎゅっと苦しくなった。
──ああ、居る。
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