18人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほんと、あいつ死んでからロクな事がない」
あの女は開け放された玄関から出てくるなり、そう呟くと煙草に火を点けてせわしなく何度も吸っては煙を吐き出した。
それから、ふと立ち止まってこちらを見ている『あなた』に気づき
「なによ」
ほとんど抑揚のない声でそう言うと、器物を見るような感情のこもらない視線を送ってよこした。
「この家の人?」
その様子に『あなた』も、低い声でぶっきらぼうにそう言った。
「だったら何?」
「この車ってきみの? 邪魔なんだけど」
『あなた』は一旦言葉を切って、やはりぶっきらぼうに、「かなり」と付け加えた。
.
最初のコメントを投稿しよう!