18人が本棚に入れています
本棚に追加
そこでタタタと連続的な足音が聞こえた。それから「ねえ、あんた!」と呼ぶ親しげな声。
わたしは知らない人が苦手だ。だから、また無意識に『あなた』の後ろに隠れてしまう。
『あなた』は少し笑って、わたしを再び抱き上げた。
「ねえ、アタシも困ってるのよぉ、あそこの人たち。よく言ってやったって思ったわ!」
息咳切らせて現れたのは、『あなた』の肩ほどにも届かない、小柄な中年女性。
わたしを見ると「かわいいわねぇ」と手を伸ばして来たが、怯えて見せると残念そうにその手をゆるゆる降ろした。
「あの……」
「アタシねえ、ほら、その角に見えるでしょ? あそこに住んでるんだけどね、もーほんっと困ってるのよう」
ほとんど息継ぎなく喋る姿は、何かの機械のようだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!