「あいつ」

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そこでタタタと連続的な足音が聞こえた。それから「ねえ、あんた!」と呼ぶ親しげな声。 わたしは知らない人が苦手だ。だから、また無意識に『あなた』の後ろに隠れてしまう。 『あなた』は少し笑って、わたしを再び抱き上げた。 「ねえ、アタシも困ってるのよぉ、あそこの人たち。よく言ってやったって思ったわ!」 息咳切らせて現れたのは、『あなた』の肩ほどにも届かない、小柄な中年女性。 わたしを見ると「かわいいわねぇ」と手を伸ばして来たが、怯えて見せると残念そうにその手をゆるゆる降ろした。 「あの……」 「アタシねえ、ほら、その角に見えるでしょ? あそこに住んでるんだけどね、もーほんっと困ってるのよう」 ほとんど息継ぎなく喋る姿は、何かの機械のようだ。 .
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