「あいつ」

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「あそこのご主人が亡くなってから、あーでも結婚してた訳じゃないからご主人ってのも違うと思うけど、ほら、あの人まだ若いでしょ? なんか溜まり場みたいになってるのよねえ、あそこ、あの家。だから毎晩のようにうるさくて、ほら、車のブンブンって音とか話し声とか」 「あの……」 口を挟む隙を見せないお喋りマシーンに、『あなた』はきょとんとしていた。 マシーンは大人しいわねぇこの子かわいいわねぇ、なんて、不意を突いてわたしにも攻撃を仕掛けてくる。 「それでさ、ほら、あのカンザキさん家が町内会長じゃない? だから注意してやれって言ったんだけど」 まいったなと小さな声で『あなた』は呟く。わたしもカンザキさんなんて人は知らないので、まいったなと思う。 .
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