「あいつ」

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『あいつ』は── 『あいつ』は、いつまでも存在するものだと思っていた。 生き物が呼吸しなくては生きていけないように、朝が来て夜が来るように、それが摂理だと思っていた。 だから、『あいつ』がいて、わたしがいて。 わたしが存在する限り、『あいつ』もまた存在して。 だから、そう。そのはずだった。 『あなた』の傍で安心する一方、とても暗い……黒いものがわたしの中にあって、引力のように心をそちらへ向けられて。 足掻いても足掻いても『あいつ』からは逃れられなくて。 離れていても、いつも居る。そこにも、そこにも、そこにも。 わたしは『あいつ』から逃げられないんだ。 そう、思っていた。 じゃあ、どうすれば これから どうすれば わたし いきていけるんだろう .
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