プロローグ

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そう言って、笑った。 涼介の笑顔を見て、裕翔も笑った。 いつも、いつもそうだった。 たくさん話して、たくさん笑って。 涼介の笑顔を見るのがうれしくて。 お互いの笑顔で、お互いがもっともっと笑顔になった。 心がまっすぐだったあの頃。 涼介は裕翔にとってかけがえのない存在だった。 それはまるで心の奥底にある湖のように キラキラと輝いている。 いつも、涼介と空と裕翔はいっしょだった。 ピアノを弾くときも、 涼介のことを思って弾いた。 ピアノを弾いていていちばんしあわせだったのは あの頃だ。 涼介にピアノを聴かせた夜があった。 今も目を閉じると、 音楽室の窓から入ってくる月の光がまぶたにうつる。 ピアノを弾く裕翔のそばに膝を抱えて座り、 瞳を輝かせ耳をかたむけてくれたのは、 涼介と空だった。 それなのに……。
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