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「失礼します」
503号室のドアをたたくと同時に、
侑李はドアを開けた。
どうぞという返事がなくても
開けて入ってきていいと
裕翔に言われている。
裕翔は窓辺で、
夕暮れの景色を見つめていた。
さっきまできれいに晴れわたっていた空は、
だんだんとオレンジ色に染まってきている。
高層ビルの谷間を行き交う車の音、
吐き出される排気ガス……
東京の空気は汚染されている。
この老人ホームは車の振動で
揺れることもある。
それでも、こうしてひっそりとした
静かな部屋の窓から眺める
夕暮れの景色は美しい。
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