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裕翔は侑李が入ってきたことにも気づかず、 窓の外の景色をぼんやりと眺めていた。 裕翔がここへ来たのは十年ほど前。 それ以来この老人ホームの ひとり部屋で暮らしている。 ほかの部屋に比べると 極端に物がない。 ここへ来ると決めたときに、 家の中にあったものは 捨ててしまったらしい。 身ひとつあればいいのだ、と。 ときおり、自分の身ですら 厄介になることがある、 とも言っていた。 生きていることは素晴らしいけれど、 長く生きすぎた ような気がする……と。
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