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「さすが、元、中学校の先生!」
侑李は明るく声を上げた。
裕翔は定年まで、中学校の教師だった
と聞いたことがある。
「僕の担当は音楽だよ」
裕翔は笑いながら、
侑李のほうにふりかえった。
「あ、そうだ。ピアノの修理、明日、
来るそうです。
また弾けますね」
侑李は前に裕翔のピアノを
聴いたことがある。
弾いているのはいつも同じ曲だ。
静かで美しくどこかで聴いたことのある曲
ーーしかし、
侑李はタイトルを思い出せない。
昭和初期には珍しかった
ピアノの黒い塗装は、
輝きを失い、傷もついている。
象牙の鍵盤も黄ばんでいるが、
当時はかなり高級なものだったとわかる。
裕翔は目を細め、何かを思い出すように、
ピアノの傷をじっと見つめていた。
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