闇と光と

2/24
1857人が本棚に入れています
本棚に追加
/196ページ
 木に寄りかかる者が一人居た。その者は黒い衣服を纏い、顔の殆どを同色の布で覆っている。  黒い布の隙間から覗く目は閉じられており、隠された口元からは規則的な呼吸音が漏れていた。また、腕は胸元で組まれており、その両脚は真っ直ぐ前方に投げ出されている。  葉の茂った木は、その者を直射日光から守り、細く伸びる木洩れ日はその体を優しく包む。殆ど動くことをしない体には、時おり鳥や蝶が留まっていた。  睡眠中の者に近付く女性が居た。彼女は、白い修道服を身に纏い、両手にバスケットを抱えている。  彼女の長い金の髪は陽の光によって輝き、青い瞳は眠っている者を優しく見つめている。また、その女性は左足を引きずって歩いており、その音で目を冷ましたのか眠っていた者は顔を上げた。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!