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「俺には理解できない。理解出来る訳が無い。だって、そこまで大切に思える相手が居ないんだもん」
そう言うと青年は笑顔を浮かべ、神父の目を真っ直ぐに見つめる。
「だからこそ、神父様にご意見を伺おうと思いまして」
青年の話を聞いた者と言えば、暫く考えた後で頷いた。そして、無言で呼吸を整えると、自らの考えを話し始める。
「実はですね、既にアンナから相談を受けているのですよ。自分は冷たいのでは無いか……と、心配されておりましたね」
神父は、そこまで話したところで片目を瞑り、部屋に置かれた電話を一瞥する。
「まあ、彼女が本格的に話してくれるよりも前に、誰かさんから電話が掛かってきた訳ですが」
神父は、そう話すと笑顔を浮かべ、シュバルツの目をじっと見つめた。一方、彼の台詞を聞いた者は気まずそうに頭を掻き、それから小さな声で話し始める。
「あー……うん、ごめん。でも、早く報告をしておきたくてさ」
そう返すと、青年はおどけた様子で舌を突きだす。一方、彼の仕草を見た者と言えば、何度か小刻みに頷いた。
「仕事熱心なのは、良いことですよ。それに、直ぐに答えが出る話では無かったので、助かりましたし」
神父の台詞を聞いたシュバルツは目を丸くし、静かに話の続きを待つ。
「いえ、ね……心の問題と言うのは、簡単ではないのですよ。ほら、あの二人って互いに支え合って生きてきたじゃないですか。それこそ、貴方が助けるよりも前から」
神父は、そこまで話したところで呼吸を整え、話しにくそうに言葉を続ける。
「言い方を変えれば、互いが互いに依存をしている。そして、二人共どちらかが居なくなってしまうことを酷く恐れている」
そう言って、神父は長く息を吐き出した。そして、ゆっくりとした呼吸を繰り返すと、気怠るそうに溜め息を吐く。
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