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それから一週間が経った後、シュバルツは木々の立ち込める場所に立っていた。彼は、時折周囲を見回しながら溜め息を吐き、気怠るそうに頭を掻く。
「おっそ」
そう言って、青年は空を見上げた。この時、空は既に暗くなっており、少しずつ雲が増えている。
「雨が降ったらやだなー……後処理が面倒そうだし」
彼が呟いた時、シュバルツの元にユーグが現れる。ユーグは警戒しながら青年に近付いており、その表情は暗さのせいかはっきりしない。
それでも、シュバルツはユーグの方に向き直り、微笑みながら口を開いた。
「こんばんは、ユーグ。こんな時間にごめんねー?」
そう言うと、青年は腕を前に広げて前進をする。一方、彼の動きを見たユーグは立ち止まり、怪訝そうに話し始めた。
「で、何? 今じゃ、無きゃ。駄目な、こと?」
そう言うと、ユーグは青年の顔をじっと見つめた。シュバルツと言えば、笑みを浮かべながらユーグを見つめており、何かを話し出す様子は無い。この為、ユーグは次第に苛立ちを募らせ、わざとらしい溜め息を吐いてみせた。
「何も、言わない、なら、帰る」
それだけ言うと、ユーグは元来た道を戻ろうとする。しかし、その道に人影が見えた為、ユーグは驚いた様子で動きを止めた。
人影が近付く度、その人物の輪郭がはっきりする。その人物はシュバルツより背が低く細身で、それが誰であるかに気付いたユーグは唇を震わせた。
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