終焉

37/38
前へ
/196ページ
次へ
 それから一週間が経った後、シュバルツは木々の立ち込める場所に立っていた。彼は、時折周囲を見回しながら溜め息を吐き、気怠るそうに頭を掻く。 「おっそ」  そう言って、青年は空を見上げた。この時、空は既に暗くなっており、少しずつ雲が増えている。 「雨が降ったらやだなー……後処理が面倒そうだし」  彼が呟いた時、シュバルツの元にユーグが現れる。ユーグは警戒しながら青年に近付いており、その表情は暗さのせいかはっきりしない。  それでも、シュバルツはユーグの方に向き直り、微笑みながら口を開いた。 「こんばんは、ユーグ。こんな時間にごめんねー?」  そう言うと、青年は腕を前に広げて前進をする。一方、彼の動きを見たユーグは立ち止まり、怪訝そうに話し始めた。 「で、何? 今じゃ、無きゃ。駄目な、こと?」  そう言うと、ユーグは青年の顔をじっと見つめた。シュバルツと言えば、笑みを浮かべながらユーグを見つめており、何かを話し出す様子は無い。この為、ユーグは次第に苛立ちを募らせ、わざとらしい溜め息を吐いてみせた。 「何も、言わない、なら、帰る」  それだけ言うと、ユーグは元来た道を戻ろうとする。しかし、その道に人影が見えた為、ユーグは驚いた様子で動きを止めた。  人影が近付く度、その人物の輪郭がはっきりする。その人物はシュバルツより背が低く細身で、それが誰であるかに気付いたユーグは唇を震わせた。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1854人が本棚に入れています
本棚に追加