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自動書機は
遺物であって
異物ですから
「分かりました。
貴方から、××の名前を頂きます」
埃だらけの手が、目の前に翳される。
「その代わり、私は私の全力をもって貴方を助けましょう」
翳された手に反射的に僅かに目を細めたとき、
彼女の頭から、一つの名前が消えた。
黒髪の人形が手を下ろすなり、頭を下げる。
「私の名前は一偉(イチイ)と申します。
どうぞ、お見知りおきを」
私と彼女の縁は、ここから始まったのでした。
「っ…それは良いから!
私を助けると言うなら此処から出して!」
はっと気付いたように彼女は私の腕を掴む。
「大声は、いけませんね」
困ったように軽く首を傾げて、私は彼女の手を引き離した。
「この場所ならば…あれ、で良いでしょう」
埃っぽく暗い部屋の、彼女が入ってきた扉に指を当てる。
その扉は、通常見えることがないように、影のように、黒い。
私は扉に記す。
『剥黒』
と
そして、彼女に向き直り、記す。
『塗黒』
と。
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