第三章 冷包 (上)

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+15+ 瑛と名乗った青年に用件を聞けば、食事が準備出来た、それだけで…律儀に待っていた姿に好感を抱いた。 物言いと行動以上に魅力ある青年なのだろう。 少し、評価が上がった。 「じゃ、食事と行きましょうか」 真新しい服に袖を通す。湯を通した肌は白く、指は滑らかで…質素な服を着ていても育った場所の良さが見えた。 別に、隠そうとも思わないけれど。 逆に、隠れてしまっては…後に戻るときに決まりよく収まらなくなるだろう。 「持ってて損はしないでしょう」 良いことばかりではないでしょうが、大局的には。 「…何かまた悪いこと考えてる?」 振り返る目が厳しい。 勝手な判断は前科としてカウントされているらしい。 私は小さくため息を吐いて、 「滅相もございません」 と白々しい嘘を吐いた。
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