第一章 塗黒

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+4+ 彼女は賢かった。 生き残るための意味、ならば。 彼女は愚かだった。 汚名を避ける意味、ならば。 「王は崩御なされた、××の仕掛けた毒によって」 言いがかりであろうと虚偽の申告あろうとも、権力者の発言には力がある。 片手が上がる。 人差し指が、真っ直ぐに彼女を指す。 「捕らえよ」 それは、死刑の宣告と同意だった。 「!」 彼女は扉を力任せに閉じて駆け出す。 走りにくい。 引っかかる。 全てが敵に思えた。 彼女は絨毯に引っかかる踵の高い靴を投げ捨てる。 スカートを破いて階段を飛び越える。 高い段差を飛び越えると足が痺れたが、絨毯があるだけマシだと、自分を慰めた。 「…何だこれは…っ!」 落ち着かない。 混乱している。 追い掛ける音を壁一枚、扉一枚でかわす。 ベランダから降りようか、 いっそのこと…… 逡巡する想いに蓋をした。 私は、××じゃない。 生きて、ゆけるはずなのだ。 城の外であろうとも。 奥へ奥へと光を避けるように潜っていく。 「…?」 見たことのない本棚を見つけた。 本を、一冊取り出せば… 向こう側が、見えた。 「…?」 向こう側に扉がある。 隠された脱出路だろうか? 本を掻き出す。 背表紙に引っかかった爪が痛む。
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