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彼女は賢かった。
生き残るための意味、ならば。
彼女は愚かだった。
汚名を避ける意味、ならば。
「王は崩御なされた、××の仕掛けた毒によって」
言いがかりであろうと虚偽の申告あろうとも、権力者の発言には力がある。
片手が上がる。
人差し指が、真っ直ぐに彼女を指す。
「捕らえよ」
それは、死刑の宣告と同意だった。
「!」
彼女は扉を力任せに閉じて駆け出す。
走りにくい。
引っかかる。
全てが敵に思えた。
彼女は絨毯に引っかかる踵の高い靴を投げ捨てる。
スカートを破いて階段を飛び越える。
高い段差を飛び越えると足が痺れたが、絨毯があるだけマシだと、自分を慰めた。
「…何だこれは…っ!」
落ち着かない。
混乱している。
追い掛ける音を壁一枚、扉一枚でかわす。
ベランダから降りようか、
いっそのこと……
逡巡する想いに蓋をした。
私は、××じゃない。
生きて、ゆけるはずなのだ。
城の外であろうとも。
奥へ奥へと光を避けるように潜っていく。
「…?」
見たことのない本棚を見つけた。
本を、一冊取り出せば…
向こう側が、見えた。
「…?」
向こう側に扉がある。
隠された脱出路だろうか?
本を掻き出す。
背表紙に引っかかった爪が痛む。
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