第一章 塗黒

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+5+ 構わない。 どうせ此処にあったのは、 ××のものだったから。 何もなくなったって 構わない。 本棚を空にすると、奥に扉が見えた。 扉を引く度に、ギッギッ…と枠を引っ掻く音がする。 散らかした跡も、この扉も、見つかればすぐに追い付かれる。 それさえ考え及ばぬ程に、彼女は焦っていた。 「ひ…っ!」 扉の向こうに、頭髪が、見えた。 長い黒髪が、埃に埋もれている。 「…出口じゃ…」 彼女の顔に、疲労が浮かんだ。 八つ当たりをするためだけに、視界にあった毛髪を力一杯引っ張る。 「っ…!!」 ずるりと埃の綿の中から、人肉で構成されたものではない、生き物が現れる。 「な…に」 服を着ている。 そこから伸びた手は、人に近く、ヒトに遠い。 「……私が壊れたら、彼の人が嘆く」 ゆっくりと掴んだ黒髪の持ち主が睨みつけてきた。 「ぅ…あ!」 慌てて彼女は手を離す。 「…困っているのなら、助けましょうか?」 埃を払いながら、黒髪のモノは覚醒する。 「貴方の名前をくれるのなら」
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