第一章 塗黒

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+6+ 名前を 分けてあげることは 出来ますか? 「…私の…?」 「そう、」 大体の埃を払い終えたつもりだろうが、髪にはまだ埃が残っている。 返答と共に頷くと、その埃が散った。 「貴方の名前を貰えば私は、貴方を助けることが出来る。 そういう、仕掛けで出来ているから」 さも当然のことのように、黒髪のモノは言う。  名前を寄越せ。  お前を象るモノを 寄越せと言う。 名前を与えることは大したことではないのかもしれない。 嘘をつくこともできる。 名前を与える程度のことは…大したことではない。  私は、私で、  私というものは、  名前に縛られては  いないはずだから。 それでも、彼女は、彼女の存在を象るモノを無くすことを恐れた。 「…××」 「…?」 「私の名前は××と言ったの。 もうこの國では価値の無い名前」 少し考えて、彼女は与えられた名前を答えた。 体の良い厄介払いが出来たと思ったのかもしれない。 彼女の言うように、彼女にとって××は、 この國ではもう、 守る価値の無い名前だったから。
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