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名前を
分けてあげることは
出来ますか?
「…私の…?」
「そう、」
大体の埃を払い終えたつもりだろうが、髪にはまだ埃が残っている。
返答と共に頷くと、その埃が散った。
「貴方の名前を貰えば私は、貴方を助けることが出来る。
そういう、仕掛けで出来ているから」
さも当然のことのように、黒髪のモノは言う。
名前を寄越せ。
お前を象るモノを 寄越せと言う。
名前を与えることは大したことではないのかもしれない。
嘘をつくこともできる。
名前を与える程度のことは…大したことではない。
私は、私で、
私というものは、
名前に縛られては
いないはずだから。
それでも、彼女は、彼女の存在を象るモノを無くすことを恐れた。
「…××」
「…?」
「私の名前は××と言ったの。
もうこの國では価値の無い名前」
少し考えて、彼女は与えられた名前を答えた。
体の良い厄介払いが出来たと思ったのかもしれない。
彼女の言うように、彼女にとって××は、
この國ではもう、
守る価値の無い名前だったから。
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