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「鬼と言いますと、この鬼ですか?」
樹は、両手の人指し指を頭の上に立てる。
「……いかにも、鬼だ」
初老の紳士が表情を変えずに答えた。
「え?」
樹、そのポーズのまま硬直するのはやめて。
「あの。鬼と言っても物語上の鬼ではなくて、心に鬼が棲んでしまった者がいるとか、そういうことですよね?」
私がフォローすると、紳士は表情を変えずに首を横に振った。
「いや“鬼”そのものだ」
え……?
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