6人が本棚に入れています
本棚に追加
ここで間違いないことを確認したライトは、まるで通い慣れた場所に入るかのように、右手を軽く挙げて拳をつくり、二度ノックした。
「……はい」
僅かに間を空けて、扉の向こう側から控えめな声が返ってきた。僅かに幼さが残っているような声から、その応えた相手が真香本人であることが分かる。
「……どなたですか?」
ゆっくりと、しかし僅かな隙間のみしか扉を開けずに、真香が姿を見せた。今日は学校が創立記念日で休みなのは事前に調べがついていたので、平日に本人が出てきてもライトは驚かなかった。
扉は指が二本しか入らないくらいしか開かれておらず、真香は扉の陰に隠れるようにして立っていた。物騒な世の中、警戒するのは当然だろう。
「突然すみません。兎月 真香さん……ですよね? 僕は天見 ライトと申します。少しお話よろしいでしょうか?」
真香が出てくると、ライトはすぐさまスイッチを切り替えて、人の良さげな柔らかい笑みを浮かべてみせ、丁寧な口調で身分を明かした。
しかし、いくら丁寧な口調といえど、突然現れた見知らぬ男に対する警戒が薄れるわけがない。むしろ、丁寧な口調で逆に怪しさがましたかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!