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その黒猫に出逢ったのは、雨の降る夜の人通りのない線路沿いだった。
黒猫は暗い道の真ん中で雨に濡れながら佇んでいた。
踏切が鳴り、電車の車窓から漏れる明かりが黒猫と私を照らして通り過ぎていく。
その明かりに一瞬反射した翡翠色の鋭い双眸が静かにこちらを見ている。
鈴のついた首輪をしていた。
水の嫌いな猫でもこんな雨の日に出かけることがあるのだな。
そう思いつつ近づいてゆくと、猫は私を避け、鈴の音を残してするりと闇に消えていった。
それが最初だった。
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