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薄明かりに若い夫婦が小さな赤子を抱いて震えている。
そこへ産婆が慌てて村長を連れてきていた。
「こ……この赤子はなんじゃ?不吉じゃ。悪魔の子が生まれてきおった」
その小さな赤子の背中には、小さな羽が生えていた。
産婆が震えるしゃがれた声で村長に尋ねる。
「この赤子……どうすれば……」
「生かしておけば、どんな災いが起こるか想像もつかん。仕方ないだろう」
女が慌てて村長の足にしがみついた。
「ど……どうかそれだけは……。お慈悲を」
村長がしがみついた女の腕を乱暴に振りほどく。
「ならん!今日のうちにこの赤子を始末するのじゃ。わかったな」
そういうと乱暴にドアを開き、村長と産婆が家を出ていった。
若い夫婦はその生まれたばかりの赤子を見た。
「私にはとてもそんなことできない。あなた、どうしましょう?」
「花の王……あの人ならなんとかできるかもしれない」
「でも、そんな人……本当にいるのかしら。それにあの迷いの森を抜けて辿りつくことができるかどうか……」
「それでも行くしかないだろう。どの道それしかこの子を助ける方法はない」
二人の夫婦は夜の明ける前に迷いの森へと向かった。
朝になれば村人達に見つかってしまう。
その前にこの子を預けなければならない。
この森は普段、村人も近づかない。
名前の通りの迷いの森で、真っ直ぐに進んでるつもりでも元来た道へと戻ってしまう。
この迷いの森を抜けることができると、伝説の魔術師と言われる「花の王」が住む家へと辿りつくと言われている。
二人はこの子が起こした奇跡なのか、無事に森を抜けることができた。
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