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早速、少女がサリーエルへと切り掛かった。彼はその一撃を無理なく剣で受け流し、よろめいた彼女の背中を蹴り付けた。
「ぐっ!」
女性だからという手加減は無いのだろう。かといってフォーラもその隙を見逃さず、剣を低く構えて斜め上からサリーエルの軸足を狙う。
悲しいが、フォーラの剣は刃がぼこぼこと凹凸を繰り返しているなまくらである。故に彼は刃を立てず、足を殴打する一撃を放った。
「っ!」
体重も乗り、威力は十分の筈である。サリーエルは身体をぐらりと傾け、逃げるように外壁へ一歩、二歩と距離を取った。
「――」
途端、激しい魔力の圧がフォーラの肌に触れた。しかしそれはサリーエルから発せられた物ではなく、敵を同じくする少女の物であったのだ。
目には見えぬものの、濃密な魔力が彼女を包んでいるのだろう。これを全て身体強化に回すだけで、生半可な使い手は為す術なく敗れてしまうのではなかろうか。
「……この子、何者だ?」
今の彼女は、フォーラが畏怖を感じる程だ。それだけの違いがここにはあった。
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