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統率を良しとする常識を、個の力だけで覆してしまう。今ここで無力さを噛み締めるフォーラには、羨望の的でしかない。
「……調子に乗るなよ」
フォーラは敵軍の最後尾へと目をやる。
「――」
いた。噂によれば、帝国親衛兵と同じ瀟洒な白甲冑と、右目を隠すような構造の仮面が彼を表す目印として伝わっている。正にその姿が、悠然と葦毛に騎馬して佇んでいたのだ。
弓は駄目だ。魔力を込めれば威力や飛距離は上がるが、射止めるだけの腕がない。ならば、とばかりに右手を開くと、それを白甲冑へと向けた。
「おい――」
「すいません、隊長」
ウォビックの声も歯止めにはならなかった。フォーラは身に流れる魔力を集中させ、一つの火球を生み出した。
当たると同時に張り付くよう燃え広がるよう組んだ、フォーラ特有の魔法だ。それを高速度で射出し、挑発をしてみる。これで仕留められるとは思っていない。
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