プロローグ

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 当のサリーエルには微塵の動揺も見せない。火球の方へ一瞥することも無く、気付いてもいないかのようだ。 「もう退け!」  ぐいと腕を引っ張られた。見ればウォビックも意を決したのかフォーラの後ろまで接近しており、口を結んでフォーラを睨みつけていた。  ウォビックは厳しさの中に優しさがあり、且つこういった場面での勇気がある男だ。そういう所にフォーラは尊敬したわけであり、彼は静かに引き下がった。 「逸る気持ちは分かる。が、落ち着け」 「……はい」  最後にちらとサリーエルの方を確認する。  やはり、魔法は防がれていたようだ。防御魔法陣の投影による物だろう。 「……む」  先程と変わった事といえば、サリーエルの頭だけが、こちらを向いているという事だ。  何か嫌な予感はした。二人は早く引き上げようと数歩下がる。 「――」  フォーラは息を呑んだ。サリーエルが不意に下馬したかと思うと、次の瞬間にはその姿が掻き消えたのだ。何の名残も無く、ただ瞬間的であった。
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