95人が本棚に入れています
本棚に追加
剣を数回打ち合い、鍔ぜり合いで押し負ける。倒れた反動で後ろに回転し、素早く水面蹴りの足払いを放つ。
目の前のこれは、フォーラが今まで戦ってきたどの相手よりも強い。彼は心の底に少し熱くなるものを感じ取ると、随分と体が軽くなったように思えた。
突き、避けられた所へ体当たりし、袈裟に切り掛かる。
「……おっ」
体に突如の停止信号が掛かった。右脇腹に押さえ付けられたような感触があり、即座に後ろへと下がる。
嫌な摩擦感。箇所を確認してみると、そこには小さな刺し傷が出来ていた。体当たり後の僅かの合間に、サリーエルの剣がフォーラ鉄製の鎧を突き破り、体に到達していたのだ。
背筋が悪寒で震える。自分の力では後何歩か足らない差を感じた。
――すると突然、二人の間に割り込んで入る一つの人影があった。
「どいてろ兵士。こいつは私が倒す」
こちらに背を向け、まるで庇うかのような姿勢だ。
背丈は低く、小柄。声は少年の物に思えたが、ちらと向いたその主立ちは女性のそれであった。
最初のコメントを投稿しよう!