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「ふざけるな、僕の敵だ」
フォーラは負けじと少女の横に並ぶ。そこで互いに強く見合うと、一斉に走り出した。
彼女は大きな布で身体を覆い隠し、右の足元からは細い剣が覗いている。恐らくは傭兵の類だろうが、参加しているという話は聞いていない。
「――覚悟ッ!」
少女は大きな声を上げると低い姿勢で走り、詠唱無しに火球の魔法を虚空から四つ射出する。
無詠唱魔法は、詠唱による魔力のコントロールを省いた物。必然と難易度は高くなり、フォーラが彼女くらい……十五、六の年頃では会得していなかった技術だ。
今のを牽制として、魔防壁の展開された隙を突いて後ろに回り込む。しかし、サリーエルは単純に振り向くことなく半身に構え、こちらへの警戒も怠らない。
フォーラが舌打つ。もし隙を見せようものなら、迷いなく手にした剣で攻撃しようと考えていたのだ。
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