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廊下からでは分からなかったが、あの音の原因は孝が壁を蹴っている音だったのだ。
机に座ると足が壁につく。
苛ついた時に、蹴ることで発散させているのだ。
数秒すると、また隆治の笑い声。そしてどん、と壁を蹴る音。
「嫌なら文句言えばいいジャン……」
口をついて出た言葉は、呆気なく暗闇に吸い取られる。
すみれも、わざと聞こえないように言っている。
昔は年子で中が良かったが、今ではきちんと口を利くこともない。
孝が嫌いなわけではない。
ただちょっと何を考えているのかわからないところが苦手なだけだ。
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