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ただ、両親が兄を信頼していることだけは知っていたし、苦々しく思っていた。
「すみれも食べな」
紀子が、次々に夕飯を温め直してくれる。
彼女はずっと座っているときがないくらいだ。
孝の前に座ると、箸を持つ。
みそ汁を飲もうと手を伸ばすと、テレビからではない音が
する。
ごくり、と暖かい汁を飲み込みその音源を探る。
すると、それは孝の足下からしていた。
いや、膝の上と言うべきだろうか。
思わずテーブルの下を覗き込むと、孝はテレビに視線をやりながらも右手でご飯を食べ、左手で膝の上に乗せたノートパソコンのキーボードを打っている。
ひい、と小さく悲鳴が漏れる。
見なかったことにして、鮭の焼き物に手を付けた。
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