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-1701年1月18日。バルト海に面した都市、ケーニヒスベルクにて。
雪がちらつくなか、ひとりの男が街を歩いていた。銀髪に鋭利な刃物を思わせる、紅い瞳。名はギルベルト・バイルシュミットといった。
彼は国である。歴史において今日、つまり、1701年1月18日に建国されたのが“彼”すなわちプロイセン王国なのである。もとはドイツ騎士団という宗教的な組織であったものたちが、ブランデンブルグのホーエンツォレルン家と結び付き、建国したプロイセン公国が先のスペイン継承戦争での功績を認められて王国に昇格したのである。
そして、いま。ギルベルトは戴冠式に出席する為に城へと急いでいるのである。
「えらい降ってきやがったな…」 ふと足を止め、空を見上げた彼の顔に雪が降ってくる。鋭い北風がギルベルトの体を叩いた。
「はやく行かねぇとな」
そうつぶやき、また歩き出した。
ギルベルトの胸にたくさんの思い出がよみがえってくる。生まれてはしめて見た景色、共に戦ってきた仲間たち。この地に移る前に最後にと見上げた故郷の空、そして背中合わせに共に戦ってきた幼なじみの顔…。
たくさんの宝物が彼にはある。そして、同じくらいある護るべきもの。それはいまある領土や民だけではない。王国に昇格するということは、もっと多くのものを彼は護らなくてはならないことを意味している。
この日が俺にとって、決して忘れられない日になるだろう。
ギルベルトはそう思った。
両肩にのしかかってくる重圧。それは、彼がこの世に生をうけたときから常に感じてきた重みだったが、なぜか今日は舞い落ちてくる、白い雪までもが重苦しく感じられた気がした。
城が見えた。
城門のまえに幼い少年がいる。少年はギルベルトの姿を見つけると、真っ赤な頬に満面の笑みを浮かべて、ギルベルトへと駆け寄った。
「兄さん!!おかえりなさい!」
幼い弟、ルートヴィッヒもまたギルベルトの護るべき大切な宝物である。
ギルベルトは駆け寄ってきた弟を抱き上げた。
これから歩むであろう、険しい修羅の道はまだ広がってはいなかった。
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