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ティガレックスの話は母親から何度も聞かされていたが、彼が本物を見たのはこれが初めてである。 突進をかわし、どうしたものかと考える。倒したいのはやまやまだが、道具袋には少しの回復薬と食料、先程剥ぎ取った素材のみ、防具は寒さ対策のマフモフシリーズ。やはり逃げるか。 突進や飛んでくる巨大な雪玉を避けながらも、少しずつ来た道を戻る。途中で小さな抜け道があった、そこならこいつも追っては来れないだろう。振り回した尻尾を回避し、そこに逃げ込もうとした時だった。 「ぐわあぁぁぁぁぁ!!」 二度目の咆哮に身体が硬直する。動けと命令する頭に反して彼の手も足も動かない。 終わったな、飛びかかる体勢になった相手を見、そう思った。瞬間、強烈な光が視界に広がり思わず目を瞑る。ぎゃあという轟竜の声に続き、確かに人の声が聞こえた。 「大丈夫か!?」 「ああ、すまない」 その声の主は、逃げるぞ、と短く言うとTomの手を引き全速力で走って行った。
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