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遠くから聞こえた悲鳴で、目が覚めた。
絹を裂くようなその声は、真っ黒な岩石を削りだして作ったこの洞穴に木霊する。
ゴツゴツとした岩肌に座りっぱなしのせいか、さっきから尻が痛い
だが別に体勢を変える気は無い。
頭から尻尾まで真っ白な犬が顎を太股に乗せているせいで、動かすのが面倒くさい。
「そろそろ小休止を終えてはどうだ、また親父殿に大目玉を食うぞ孝信」
孝信、と俺の名前を白い毛の塊が呼ぶ。
気が付いたら、自分が予想以上に汗をかいている事に気付き、羽織っていた真紅の半纏を仰いで体に風を送るが、すぐにやめた。
何故なら、この穴倉の外には天まで焦がさんばかりの火柱が立ち昇っているからだ。
このクソ暑いのに、わざわざ熱風を受ける趣味は無い。
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