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住み込みのコンビニバイトを始めたのは、半年前。
美奈子と俺は地元の高校で出会って、3年の3学期についに付き合った。
美奈子は俺を見つめ、柔らかく笑う。そして、大好きだよと言って、キスをした。唇が少し触れると、美奈子を好きな気持ちが押さえられなくなって、舌を絡めては戻し、目を開けて、お互いを見つめあった。
美奈子は涙を浮かべ、私も来年は東京に行くからと俺の胸に顔を押し付けて言った。
美奈子をそっと遠ざけて足元のボストンバッグを握りしめた。振り返る事もできずに、美奈子に目を奪われたまま、後ずさりして電車に乗った。
それが最終。
地元はもう無くなってしまった。町全体が……
仕送りもない俺に8万もする家賃は払い切れず、もちろん学費も払えないから、大学も退学した。そして、このボロアパートに転がり込んだ。
午前5時になり、バイトを上がる時間になった。次のシフトの先輩が眠くて瞼があがらないような顔をして、挨拶してくる。
「ふわわぁ。ちーす。お疲れ。ゴミだけ裏に集めといて……」
俺は言われた通りに表のごみ箱から袋を取り出して、新しいものに変えた。
いつもより、断然軽い。あんな事件が起きているから当然と言えば当然か……
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