其の四

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 僕は今、介護福祉士として老人ホームで働いている。高校卒業後、専門学校に通い、国家試験に合格して資格を取得した。もう、この仕事に就いて七年になる。  子供の頃の出来事が、僕の中でどのように影響して来たのかは、僕自身判らない。何故あの時、ああいう行動をしたのかも判らない。  仕事を続けていく中で、いつか答えが見つかるかもしれないが、敢えて積極的に見つけ出そうとは思わない。  ただ、この二つの出来事が、僕の中で大きな存在になっている事は確かだ。もう20年近くも前の事なのだが、事ある毎に記憶が甦る。  皺だらけのおじいちゃん達の手を見ては、あのじいちゃんの指を思い出す。不自由な足でヒョコヒョコと歩くおばあちゃんの後ろ姿を見ては、学との出来事を思い出す。  何故ああしたのか。どう影響してきたのか。  何故、僕は今、福祉の仕事をしているのか。  結局、どれも判っていない。  それで良いのだと思う。
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