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「ねえ、見てこれ。じいちゃんの真似」
僕は右手を上げていた。
中指と薬指にセロテープをグルグルと巻きつけた右手を上げていた。
「ほら、曲げようと思っても曲がらないよ」
「おい、幸太郎」
僕が父の目を見た瞬間。
僕の体は後ろに仰け反り、頭を茶箪笥に思い切りぶつけていた。耳の奥がキーンと鳴っていた。目を開けて、ゆっくり体を起こすと、ポタポタと鼻血が僕の太ももに垂れた。
「じいちゃんを馬鹿にするな」
父の罵声が続いた。
「お前のような奴は、俺の子じゃない。もうじいちゃんの所へも、行くな。今すぐ家から出て行け」
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