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永倉が部屋の中に入りきり、
後ろ手で障子を閉めると静かな声で言った。
「…俺で遊んでるのか」
「え、永倉さんにそんな事しません」
「…お前、どっかいいとこの姫さんか?」
「覚えていないのでなんとも…」
「そう、だったな…」
あは、ははは、と引きつった笑いしか出来ない。
それくらいこの部屋の雰囲気が悪い。
というか、永倉さんの顔が怖い。
そんなに着物の着方が
分からないのはおかしいのかな。
「はぁー。分からないけど、分かった。」
永倉の顔色を伺っていると、
大きく溜息をついてこちらに歩み寄ってきた。
「いいか、衿元握っとけ。絶対離すなよ。」
シュルシュルと音がして適当に結んでいた腰の締め付けがとられたのが分かった。永倉の言う事は絶対、と衿元をぎゅっと握って固まる。
「…後ろ向いてるから、もう一度合わせを直せ。
直したらそのまま動くな。いいか?」
「はい!」
言われた通り合わせをきちんと直して右手で左腰のあたりに着物を止める。
「できました!」
「…よし。まだそこ、押さえとけよ。」
紐を持って千寛の前に膝をつき、ぐるっと抱きつくように腕を回す。キュッと腰あたりで紐を結び、再び襟を直すように両脇から引っ張られた。そして、その上から腰のあたりをもう一本の紐で結んで帯を締める。その後はシワや身なりを丁寧に整えられた。
あっと言う間に着付けが終わった。
これを自分でやるのはなかなか、難しいかもしれない…
「…よし。」
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