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【秘色の涙】
私は堪らず、両の腕で視界を覆った。
それが、見たくないからなのか、見られたくないからなのかは、よく分からなかった。
男が微かに笑い声をたてる。
気に障る、低い声。
ごつごつとした指が、首筋を這った。
喉につかえる、拒絶の言葉。
私はそれを、飲み込む。
頑なに拒む光。
求めるのは、闇。
息を詰まらせながら、身体中に降る感覚にただ神経を尖らす。
何て滑稽。
何て無様。
何て、幸福。
解かれた視界に、貴方の笑み。
ああ。
お願い、もう一度。
Fin.
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