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ある物とは、いつまでも捨てられない録音器。
昔、俺の親がこれによって脅されていたみたいだけど。
初めてこの中の音を聞いた時は、現実を信じたくなかった。
俺の中で、1番古い記憶。
5歳くらいの時の物。
「せいぜい、二十歳まででしょう。」
俺のおじいちゃんの兄のところで俺は育った。
「そうか。しかたないですね。」
その人の苗字は……龍造寺。
大会社の社長。
「えぇ。何があっても無理でしょうね。移植も不可能です。」
彼はもう諦めていた。
「体力的な問題と酸素の供給量……か。」
彼の横に座る、まだ話の内容が理解できないほど、小さな命を。
「いえ、それだけじゃありません。」
自分の姪と甥が犯した過ちによる、産物を。
「体の全ての臓器を取り替えるまで、生き残る確率は上がりません。」
なかなか笑わない、小さな命だった。
この録音器がこの少年に送られたのは、中学生になってからだった。
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