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赤髪の女の子は胸元を掴み、何度も揺さぶった。
「挨拶しなくても…覚えているだろ、あたしの名前を!!」
女の子は背が低い為、レインを見上げる形になっている。
そして、何度も何度も…レインの胸を叩く。
「覚えていないって何だよ! みんなは…レインが帰って来るのをずっと待っていたんだぞ」
女の子は叫び、その目に涙が浮かんでいるのがわかった。
だから、レインは何もせずに、女の子を見ている。
「あたしも、シグナムも、シャマルも、ザフィーラも、はやてやなのはだって!!」
女の子は腕を大きく上げて、レインの胸を強く叩いた。
「ずっと…待っていたんだよ!!特に…なのはは―――!」
「ヴィータ!! もう止すんや」
はやての声にヴィータと呼ばれた女の子は、レインの胸に顔を埋めていた。
「う……うっ………」
抑えようもなく、あとからあとから涙が零れ落ちる。
両手で強くレインの胸元を掴んだまま、力まかせに額を押し付けて、ヴィータは嗚咽を漏らし続けた。
号泣しながら、床に涙が落ちるのが分かる。
やがて、頭にレインの右手が乗るのを感じた。
そのままレインはヴィータの頭を撫でいた。
その撫でる温かさが、ヴィータにあの記憶を思い出させていた。
9年前に撫でもらった、あの感覚を。
「うあぁっ……バカだ……お前は…大バカだっ!!」
叫ぶ間も、悲しみの涙はあとからあとから零れ落ち、レインの胸を濡らしていった。
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