第4章 知られ会う2人

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はやてとレインは会話がないまま、歩き続ける。 最初に口を開いたのはレイン。 「なぁ…はやても俺の事を知ってるのか?」 その質問にはやては何も答えず、歩き続ける。 答えがくるのを諦め、レインは髪を掻いた。 「知ってるでえ」 「えっ?」 突然、はやてが答えてきた。 「レイン君の事。 知ってる、ずっと前からね」 「そうなのか? 勘違いって事は―――」 「それは絶対になかぁ!!」 はやては足を止めて、レインを振り返ってきた。 その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。 「ウチは知ってる! レイン君事を、その姿を、その声を! せやから勘違いなんてことは絶対になかぁっ!!」 はやての叫びにレインは何も言えなくなってしまう。 ただ、泣いているはやてを見ている事しか出来なかった。 袖で涙を拭いて、はやては前を向いて再び歩き出した。 すぐにレインもその後ろに付いていく。 その背中に向かって…レインが言った。 「はやて…ごめん」 聞こえたかどうかはわからない。 ただ、レインにはその時、はやてが涙を流したような気がした。 1分ぐらい歩いて、目的の部屋の前に到着した。 「ここや、この中にレイン君に会わせたい人がおる」 「なぁ、少しぐらい教えてくれてもいいんじゃないのか?」 「………この中におるのは、レイン君がよく知ってる人や」 「知ってる人って、俺は覚えてなんか」 「大丈夫や。 何となくやけど…大丈夫のような気がするんや」 「そうなのか?」 「ウチは信じる…レイン君は全部は忘れてへんはずや」 そう言って、はやては部屋を開けて、中に入って行った。 レインもすぐに続いた。 そして、部屋の中には…栗色の髪をした女性がいた。
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