第4章 知られ会う2人

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その女性を見た途端、何かがレインの頭を過った。 何が過ったのかは、わからない。 ただ、頭の中に何が走り、底に眠っていた何かが頭を駆け巡る。 思わず右手で頭を抑える。 (何だよ……この感じは…!) 栗色の髪の女性がレインに近づいてくる。 だが、その時の女性の顔はどこか寂しそう見えた。 (何で…そんな顔を…) 女性のそんな顔を見ると、レインまで悲しい気持ちになる。 (何なんだよ……一体っ!?) 女性はレインの目の前まで来て、見上げくる。 栗色の髪に綺麗な顔立ち。 (知っている…俺は…この女性を知っている……) そう思った時、頭が重くなるのを感じた。 頭の上から…何かで抑えつけられてるような感覚だ。 「―――っ!!」 女性が何かを言っている。 しかし、それもよく聞こえない、女性の顔も、ぼやけて見えなくなってくる。 「……っ…! ………君っ!!」 女性は何かを言い続けている。 必死に叫ぶ、涙声で混じりで何度も。 (聞こえないっ!………聞こえないっっ!!) 更に頭に重みが掛かる。 「…レ……君っ!! ………ン君っ!!!」 徐々に女性の声が聞こえてきた。 (呼んでる…のは…名前…この名前…は…) 「レ……ン君!!……イン…君っ!!」 (俺の……名前…!!) それに気づいた瞬間、頭の重みが消え、ぼやけていた女性の顔が、はっきりと確認できた。 涙目で、左手で自分の胸元をぎゅっと握りしめ、再び叫んできた。 「レイン君っ!!!」 女性がレインの名前を呼んでいる。 知っている声で。 レインは戸惑いなから口を開いた。 「…なの……は……ッ!?」 レインがはっと気づく。 そして―――。 「なの…は!」 その女性の名前を呼んでいた。 自分の名前を呼ばれた、なのはは笑顔を浮かべて、レインに抱きついていた。
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