プロローグ

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「俺は必ず帰って来る」 その言葉を信じて、私は待ち続けている。 彼を――― 「いつ…帰って来るのかな…。 早く…会いたいな」 頭に出てくる、彼の顔、髪、姿。 いつも思い出してしまう、あの笑顔を、あの手の温もりを。 「会いたいよ……」 自然に出た言葉は小さく、寂しそうだった。 自分の胸を強く握り、唇を噛み締める。 込み上げて来た涙を流さないように、ぐっと堪える。 「駄目、今は泣けない……泣くのは…帰って来てから」 少し出てきた雫を拭いた時だった。 「なのはさん、準備出来ました?」 元気で明るい声が扉越しに聞こえて来た 声だけで誰かわかった。 「すぐ行くよ! スバル!!」 悲しかった気持ちを隠し、私は扉を開ける。 青色の断髪が目に入る。 「みんな待ってますよ。 早く行きましょう」 「うん、ごめんね、待たせちゃって」 「何かしてたんですか?」 「ちょっと考えごとをね」 私が歩き出すと、スバルが私の横に並ぶ。 「何を考えていたんですか?」 「昔の事を少しね」 「昔の事?」 「いつか…スバル達にも話すかも知れないね」 「わかりました。 話てくれるまで待ってます」 「よろしい」 私が笑顔で答えると、スバルも笑顔で返していた。 (私も待ってるからね。 レイン君) 胸の痛みを隠しながら…
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