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暗澹である。
この世に生を受けて、生に失望したことは、僕が生きてきた17年間の中で何度体験しただろう。
こんなにも光に満ちた世界が暗く見えるような、そんな失望感が僕の脳髄を支配する。
朝起きて、気怠い体に鞭を打ち学校へ行き、大して面白くもない教師の退屈な授業を聞き流しながら窓の外を見上げていたら、ふと、そんな気分になった。
当然、何の脈絡もない。ただの自己投影による現実逃避である。
「つまらない…」
僕は呟く。
その呟きは、息を吐く音のように微かで、微かに髪を撫でる微風のごとく目の前の空気に霧散した。
僕の呟きが聞こえたのかどうかは知らないが一瞬、教師が僕の方を睨んだように感じた。
睨むように感じた視線に僕は一人納得する。なにせ出来の悪い生徒を戒めるかのような視線と感じられたからだ。
まあ、本当に教師が僕の方を睨んだのかは分からないのだが。
僕、イツキはごく普通の公立高校二年の男子校生。
成績も普通、運動神経も可もなく、不可もなくといった一般的な生徒だ。
ふと時計を見ると、授業時間は、あと五分もない。
この授業の教師は、偉そうにノートを取れと言う割に板書はあまりしない。
お陰でノートの内容は要点など重要事項だけで、簡潔に纏まっている。
「今日は終わりだ。明日の予習は忘れるなよ」
この教師は、いつも授業終了五分前くらいには授業を切り上げる。
理由は特にはないらしいし、特に進学校でもないこの学校の生徒には授業から解放されることに喜びを感じている。
簡単な号令の後、担任の新山先生が来て連絡を済ませると、号令、放課となった。
僕は鞄の中に荷物を入れ、教室を出た。
行く場所は僕の所属する部活、文芸部。
活動内容は、読書と執筆だけで、文化祭くらいしか執筆する機会はなく、僕や他の部員は大抵、雑談や読書をして過ごしている。
それこそ、大したルールもない緩い雰囲気が満ちた空間である。
僕は廊下に出てすぐ右へ進み、五メートルかそこらら直ぐにある階段を下り、部室棟への渡り廊下を歩き部室棟へ入った。
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