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「…で、斬る気がねぇんなら、何の用だ?」
確かに、互いの立場からは刃を交える事くらいしか、ない。
「俺ァいつでもいいが、今日は久しぶりの非番だから、出来るなら物騒な事は避けたい」
「そりゃ奇遇だ。ワシもそう思っていたところじゃ」
龍馬は大きな声で笑った。ひとしきり笑うと、真顔になって
「今の幕府をどう思うちょる?」
新撰組副長に対して、愚問とも思える問いを投げかけた。歳三は一瞬言葉につまったが、軽く深呼吸をした後、
「さぁな…」
と、短く答えた後、続けた。
「それは新撰組副長としての言葉か?それとも土方歳三ひとりの人間としての言葉か?」
歳三はゆっくりと顔をあげ、遠くを見つめながら口を開いた。
「多摩の薬売りの言葉だ…
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