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「刀のいらない世の中か…」 歳三は、気持ちを落ち着けるような息を吐き、つづけた。 「俺はお前みたいに先の為…次のために、今何かをってぇ考え方は出来ねぇ。今を、今の自分の信じる道を進んだ先に、何があってもかまわねぇ。今があるから先がある。俺はそういう考え方しかできねぇんだよ…」 そして、刀に目をやり 「この時勢に、刀に固執する俺と、西洋のピストルを持っているお前。 俺らの違いはそこじゃねぇか?」 歳三はわかっていた。己が進もうとしている先には、破滅しかないことを。徳川の世が長くは続かない事を。 泥船だが乗ってしまったからには、最期まで乗り続けなくてはいけない。途中で降りるわけにもいかない。 「わかっているさ…先の事なんて…な…」 諦めに似た言葉を出しかけた時、外がにわかに騒がしくなった。
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