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「しん…ぉきた……」
微かに聞こえた声は、沖田の声だった。ざわめきはやがて、怒号と悲鳴に変わった。
やれやれ…という風にゆっくりと歳三は立ち上がり、着物の裾の埃をはらいながら
「非番でも、休ませては貰えねぇみたいだ」
と、軽く笑いながら言った。
「本当じゃ。わしも、とばっちりを喰う前に退散する」
と言って、龍馬は騒ぎとは逆の裏口に向かった。
龍馬の姿が見えくなってから、歳三は声の方に歩いて行った。
歳三が騒ぎの現場に着いた時には、浪人が平隊士に押さえられた後だった。
「おい、どうした?非番の時くれぇ休ませろっ」
傍らに立っていた沖田に向かって、愚痴まじりに言った。沖田は
「誰も土方さんなんて呼んでませんよ。騒ぎが起こる所にいるのが悪いんですよ」
さらっと、憎まれ口をたたいた。
「…るせっ!」
歳三はバツが悪くなり、軽く沖田の頭を小突くと、街の雑踏に姿を消した。
…土方
惜しいのぅ…
犬死にだけはせんようにな…
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